魔術社会の歴史?魔法は一人でできたのではなく、昔からあって今もここに

魔術は邪悪だと簡単に決めつけられません。ただ特定の宗教への帰属しないことで排斥されます。あるいは特定の社会制度に帰属しないことで排斥されます。この現象は、現代のいじめであったり、お一人さまにも似た状況が見られる気がします。

19世紀というのは現代に直接接続している近代と呼べる時代です。現代ではあって当たり前のさまざまな器具が発明された、科学全盛の時代でした。そんな時代に活躍したアーサー・コナンドイルは心霊主義に傾倒していたのはあまりにも有名な話です。

彼が傾倒した心霊主義などの広い意味での神秘主義を醸し育てたのは「フリーメイソン」だろうと思います。フリーメイソンは起源が1390年にも遡るとも言われる友愛団体です。

通説としては石工組合としてフリーメイソンはさらに歴史を遡ることになります。中世ヨーロッパでの石工は高い社会的地位にありました。組合が厳格な伝承主義を採ったのは、その高い技術の漏洩を防ぐためだったと言われます。

結果的にフリーメイソンは中世の儀式系統を受け継ぐようになりました。一方でカトリックと対立する神秘主義的団体として理解されるようになっていきました。そして16世紀イギリスでさまざまな貴族や知識人が加入すると友愛団体に変貌しました。

遡って中世までたどれば、1189年にロンドンでリチャード一世の戴冠に際して、ユダヤ人たちの集団が祝祷を唱した事実が、手元の資料に見られます。どのような祝祷が用いられたのか詳細は不明ですが、彼らはそれを機会に迫害されることになったと続きます。

一般的には、中世魔術は「ピカトリクス」に遡るのが適当でしょう。カスティーリャ王アルフォンソ10世がアラビア語から翻訳させたのが1256年。さらにアラビア語とスペイン語からラテン語に翻訳されて15世紀には広く流布しました。

この時代の書物は中世の魔術を直接継承していると考えられるでしょう。この書の背景にはネオプラトニズムがあり、ヘルメス主義、占星術、錬金術、魔術などに関するアラビア語の文献が基本になっているとされます。

またこの他にいくつかの魔術書が中世起源だとされます。「ホノリウスの誓いの書」は降霊術の手引き書です。「アルス・ノトリア」はリベラルアーツの知識獲得、言語速習、記憶術などを扱っています。「精霊の職務の書」は悪霊を列挙して解説しているそうです。これらの書物がいずれもルネサンス期に表されているのは、少なくとも十字軍遠征によるアラビア文化の流入が大きく影響する歴史的現象だからです。

団体としては「薔薇十字協団」の存在が初めて語られたのは1614年でした。薔薇十字とはフリーメイソンの第18階級である「薔薇十字の騎士」を意味し、十字軍に起源を求めます。彼らが言う通り、フリーメイソンの第18階級だとするならば、フリーメイソンは薔薇十字団の母体です。クリスチャン・ローゼンクロイツが創始者とされ、錬金術や魔術などを駆使します。

そこから時間を経て、「黄金の夜明け団」は英国薔薇十字協会の会員たちが1888年に創設しました。彼らはカバラを中心に、神智学の東洋哲学、錬金術、タロット、占い、魔術書などを混合した教義を整えました。

「儀式魔術」は別名「高等魔術」です。ネオプラトニズム的にカバラを中心にした秘教であり、黄金の夜明け団によって体系化されました。儀式魔術は黄金の夜明け団によって生み出され、現代に公開されたものです。この高等魔術がウイッカなどの魔術の基礎になっているようです。

魔術の不明瞭さが周囲の不安感を刺激するのかも知れません。その意味ではどのような術であれ、社会性を持っていることになります。