【現代魔術の基盤】近代に活躍した魔術的な人たちから現代が継承された

歴史の流れとともに途絶えつつ、変形しながら受け継がれてきた魔術の歴史には、比較的はっきりとしたルーツをそれぞれの時代に見てとることができました。そのように現代のウイッカなどの魔法使いたちの源流も同様に把握できるようです。

「黄金の夜明け団」から現代ウイッカへと繋がります。この主役はマグレガー・メイザースという19世紀の人物です。彼は1877年にフリーメーソンに入会しました。メーソンリーで位階制度や伝承されている知識に触れたようです。

そして1882年に英国薔薇十字協会に入会しました。ここではきっと純然たる伝承魔術のいくつかを学ぶことになったと思います。彼は二つの異なるグループに同時に所属していたことになります。性格の違うグループに所属するのは、ある意味不自由で、自分の世界を造る邪魔になりかねません。

とうとう1888年に黄金の夜明け団を設立しました。ですから黄金の夜明け団はフリーメイソンから儀式や位階制度を引き継ぎ、薔薇十字協会から古代の技法・思想を継承していることになるでしょう。ここにも歴史的なパターン、混淆と折衷があるのでしょうか。

この黄金の夜明け団から分離独立したアレイスター・クロウリーが儀式魔術の体系を基礎づけました。アレイスター・クロウリーはマスコミからも非難された最も有名な魔術師だといえます。彼の書は日本語にもなっており、読者も少なくないと思われます。

厳格すぎるキリスト教教育が彼の背景にあるという意見もあるが、それがオカルティズムへと傾倒するきっかけになったのかは、確定的に信じることは難しいでしょう。

彼は黄金の夜明け団に入団し、魔術研究に入りました。その後、夜明け団のもめ事に巻き込まれたようにして、脱会後、東洋の神秘主義など独自の魔術研究を進めたそうです。東南アジアや日本にも来てヨガや思想を学んだとも言われています。

彼の研究成果は『法の書』として発表され、魔術師として菜を上げました。その後、1920年にはシチリアにテレマ僧院を設立しましたが、そこでは麻薬や性魔術を応用した過激な儀式を繰り返しました。このような実践が彼の妖しさを感じさせる要因の一つに思えます。

実際その通りで、ある男性信者が儀式で猫の血を飲んで感染死したことから、国外退去になりました。彼はしかし、現代でも愛用者が多いトートタロットの考案者でもあります。妖しいだけではない魅力が彼にはあるのです。

直接現代のウイッカに繋がっているのはジェラルド・ガードナーですが、彼こそはウイッカの創始者です。彼は1936年頃、魔女のイニシエーションを受け、アレイスター・クロウリーの協力を得て、ウィッカの体系を構築し、「現代ウイッチクラフト運動」を創始しました。

1954年『今日の魔女術』で、魔女術はイギリスのペイガン宗の系統にあると主張しました。彼の『影の書』が現代ウイッカンたちの中心的教義を提供しています。これ以降の魔女術は彼の教義を中心に展開されることになります。

アレックス・サンダースはウイッカをメディアに公開しました。1966年以降、彼が創始した「アレクサンドリア派」はメディアで儀式内容を公開して人気を獲得し、ウィッカ最大の会員数であったといいます。

そしてファーラー夫妻が現在もウイッカンたちを指導しています。1970年代にサンダースの魔女グループに参加して夫婦は出会い、翌年には独立して自分たちのグループを作りました。

その後二人は結婚し、1976年にアイルランドに移住して、人気者になりました。妻のジャネットはガードナー直系のドリーン・ヴァリアンテとの交流からウイッカ文書を発表し続けています。